休学経験者が当時の経験や考えを語る共同ブログ
大学生の僕に世界は変えられない【in スラム】
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【19歳】スラム街でホームステイ

 「学生がスラムでボランティアをした結果」

 

爆音のクラブミュージックが僕のいる3階のベランダまで届く。

ここからの景色はコンテナの山と、そして見下ろせば“いかにも”といった風貌の男たちの群れ。
地図に名前すら載らないこの街は、平和ボケした僕に―・・こんな言い方は陳腐かもしれないが、『世界の現実』の、その片鱗を見せた。

毎日の仕事は新鮮ではあったが淡々とこなせる内容だった。
子供の衛生面を保つために一日2~3回のシャワーを手伝い、それと昼食の用意と片付け、お昼寝の時間になったら寝つかすために1人1人に添い寝する。
幼児のお世話なんて、この19年間やったことなどない僕にとっては戸惑う事ばかりだ。
本当に色んな子供がいて、すごく甘えん坊の子、泣き虫、わんぱくな子、遊び上手、手がかからなくてお行儀のいい子・・・・etc
園内での仕事はほのぼのとした、当時の僕のイメージの中では本当に“ボランティアらしい事”だった。

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その他の、もう1つの仕事は「スラム巡回」という位置づけで子供たちの家庭を訪問するものだった。
今まで立ち入る事の無かった保育園の目の前に広がるバラックが軒を連ねる細い路地に、ヤオさんとYukiと三人で入っていく。
掘っ建て小屋が不格好に傾いたままだったり、部屋の中にヘドロが浸水している家、雨漏りしすぎて家を構成する木材が腐っていたりと、明らかに、表通りとは空気が違う裏路地。
特に雨季であるこの時期は、スラム内の衛生環境が著しく悪くなりその影響で免疫力の弱い幼児などは病気にかかりやすい。
またヘロインの売買や強盗、傷害事件も頻繁に起こる。

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灰色の重々しい空は、今にもスコールを降らせそうな顔色だ。
背中にじっとりとした汗が流れるのは湿度のせいか、それとも・・・・緊張からか。
スラムの住人達の視線が突き刺さって、家と家が所狭しと詰まったその細い迷路のような路地をうつむきながら歩く。
少しひらけた場所の商店に着いた時、集団でそこに溜まっていた人々の内の1人の男がヤオさんに話しかけた。
やたらと何か抗議するような口調でまくしたてている、僕を指差しながら。
その男の目が、こわくて仕方なかった。どこか焦点が合ってないようにも見えた。
心臓が口から出そうなぐらいうるさい、首筋辺りに冷や汗がすーっとつたっている。
ヤオさんはその男をなだめるような言葉をかけているのだろう、なんとなくその表情から見てとれる。
僕が部外者であっても、悪い事をしに来たわけではない事を説明しているようだった。
どうやらうまくやり過ごしたらしく、ハァッと無意識に止めていた息を吐き出した。

その一悶着が過ぎ去ったすぐ後だったからこそ、僕は不意打ちを喰らわずに済んだのかもしれない。
トタン屋根ばかりの集落の中に、ぽつんとその景色は現れた。

何枚かの布を木にひっかけただけのテントの集合体。

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雨が降れば雨漏りなんてもんじゃないだろう、嵐の日には家ごと飛んでいってしまうかもしれないほど脆弱な造りのその“家”の中には枯れ木のような腕、痩せこけた顔の女性がそこにはいた。
そしてその家には僕がお世話している子供も住んでいるのだと、Yukiが教えてくれた。

腹の底が、カッっと熱くなった。

怒り狂いそう、とはこの事だった。

ヘドロまみれで浸水したアスファルトの上に、華奢な木々とそしてボロ切れの低いテント。

その下に、母と幼い子供の二人。

誰がこうした?誰のせいだ?なぜだ?なんでだ?
どうしてこの人達がこの生活を強いられないければならない?

ふざけるな。

思わずビデオカメラを取り出して撮影を開始した。
この地域でカメラを回すのはリスキーではあったが、ただこの現状を伝えたかった。
「やばい、これやばい」、それしか言えない自分が情けなくてしょうがなかった。
怒りと戸惑いと悲しさと驚きと、挙げたらキリがないほどの感情が渦巻いて、今にも叫びだしそうなほどの昂りを感じた。
スラムを出る時、薄汚れた壁にスプレーのラクガキを見た。
「This is a safety area」
皮肉にも度合いがあるだろう、と苦笑いをしたのを覚えている。

暴発しそうな感情を抱えながら、悶々と考えながらスラムでの生活を終えた。
一時の感情なら、すぐに静かになるはずだろう。
しかし、そうはならなかった。
考えれば考えるほど、この旅で僕が出来る事は無かった。
ヤオさん達の地道な活動を見てきた以上、金を落とす事や学校を建てる事が根本的な解決になるとは到底思えなかった。
外圧的で尚且つ現地語もできない、ただの大学生である自分がボランティアをした所で世界はこれっぽっちも変わるハズがなかった。
当たり前を肌身で実感として感じる事ほど、痛切な事は無い。
無知、無力。恥知らずの勘違いをした、ただの大学生だったんだろう僕は。

しかし自分でも整理がつかないその感情だけは心の底に居続けていた。
インドで出会った1人の男との出会いによって、その感情の矛先は決まるー・・・。

次回記事⇒僕の旅を変えた男@インド

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白井 耕平

白井 耕平

武蔵大学の人文学部2年。 アジア、アフリカが好きなヨーロッパ文化学科。 休学して世界一周していました。 旅関連の記事を発信していきます。 白井 耕平の詳細プロフィールページ
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